レイオフ(退職勧奨)された話
時間が経つと忘れる気がするので記録に残すことにした。
注:会社のことについては基本的にニュースになっている(公になっている)情報をもとに書く
1月下旬
2022年から Big Tech をはじめ多くの会社でレイオフが実行されている。
- Amazonが1万7000人以上を解雇へ、近年のテクノロジー企業で最多
- Microsoft、従業員1万人の大量レイオフ
- Googleも過去最大の1万2000人の大量レイオフへ
- 「現実世界」の問題を解決したいマーク・ザッカーバーグ。Meta、1万1000人のレイオフ
勤務先でもレイオフ発表&USで実行されたけど、雇用に関する法律は国ごとに違うので日本を含む各国でのレイオフについては今後現地法に基づいて実行されるという話。
つまり近々レイオフされるかもしれないけど宙ぶらりんらしい。宙ぶらりんの状態のことを “in limbo” と言うらしい。“My employment status is in limbo” と言う。
こんな時でも、知らない単語を学ぶ機会になるようだ。
発表があった次の勤務日は、みんな仕事する気にはならない感じだった。普段は在宅勤務と出社を組み合わせたハイブリッドワークになっている会社だが、出社していた人がいつもより多かったように思った。みんな不安だし、誰かと話したかったんだと思う。
2月
自分の周りには大きな変化はなかった。だけど通知があった国もあったらしい。
ここで見えてきたのは各国の雇用制度の違い。US は “at-will employment” という「雇用者・被用者のどちらからでも・いつでも・いかなる理由でも・理由がなくても自由に解約できるという原則」(from wikipedia)制度になっているから人を解雇するのは簡単らしい。
一方でヨーロッパの国で人を解雇するのは大変らしい。特にフランスとかドイツは厳しいらしい。日本って解雇しにくいって話があるけど他の国と比べるとそんなに規制が強いわけではないらしい。別に知らなくてよかったことだけどこういうことを知るのは面白い。
Linkedin の投稿を見るとどうやらレイオフの通知は深夜から朝方にかけてあるらしいという話から夜寝る時に不安になってなかなか寝付けなかったり、深夜にふと目が覚めてスマホをチェックしたり、朝起きてすぐスマホをチェックしたりするようになっていた。もうすでに精神的な疲労が大きい。
3月
これずっと続くのきついなと思った次の日、朝起きたら同僚からLINEが来てて「対象者には通知されたみたいですよ」とのこと。自分の会社用のスマホのメールボックスに「Your role has been indentified as impacted(あなたはレイオフの対象です)」を告げるメールが。
あー当たったかーーーーー
これが第一声。「今やりかけのプロジェクト途中だけどここで終わりかー」と言うのが頭に浮かんだ。ある程度進んでるものであと少しでリリースできそうなものとか、これから考えていこうとしてたものとか。そういうのが全部もう終わりです、と。
感情的にはゲームをやっている途中で親に電源を切られた時と似ていた。「まだ途中なのに」「せめてキリのいいところまでやらせて」という気持ちだった。もちろん「なんで僕なんですか」という気持ちがなかったわけじゃないけど、 じゃあ誰だったらいいのって言われるとそれに対する答えなんてなくて。去ることになる人はそうだけど、残ることになる人もなんとも言えない気持ちになったと思う。残る側の人のこの気持ちを Survivor’s guilt というらしい。
ここまでレイオフという言葉を使っていたけど正確には退職勧奨という「会社側から従業員への働きかけ」というもので、断る権利はあるらしい。
断る権利はあるけどたくさんの人と話をして、色々考えた結果サインする(辞める)ことにした。
通知から2週間後、退職の合意書にサインして同僚にさよならを言ってオフィスを出た。
国によってはいきなり通知されてもうオフィスに入れませんってこともあったらしいので、さよならの挨拶ができるだけよかったかなと思った。
ちなみに日本の会社だと退職する時ってお菓子を持ってお世話になった人にお礼を伝えてお菓子を配るってことをやると思うんだけど、日本特有の風習のようで お菓子を持って挨拶しに行ったら「Oh omiyage?」とお土産と勘違いされることが何度かあった。
というわけで入社してから3年で退職することに。
3月中旬 - 転職活動開始
仕事はなくなったけどすぐに解雇になるわけではなくて、少し雇用は継続する(Garden leave というらしい)のでその間に次の職を見つけることに。
世にも珍しい「仕事をしない」という仕事をしている状態である。
しかし世の中はマジ不景気ですと言わんばかりのレイオフの嵐。外資の求人はほとんどなくて、日本の企業でも希望退職や採用絞ってるという話も。
求人探し
まずは元同僚や友人と話して情報収集したり、元同僚が働いている会社のカジュアルランチに誘ってもらってご飯を食べた。
それと Linkedin と Findy を使って自分の繋がりにはない求人探しをやった。
Linkedin で #OpenToWork にステータス変更すると会社のリクルータや転職エージェントの人たちからメッセージをもらった。興味ありそうな会社であれば返信して詳しくポジションの話を聞いてみたり。ただ今回の転職活動では Linkedin でコンタクトのあった転職エージェントはほぼ役に立たなかった、社名を直接言わず「30分話そう」「電話しよう」「Great opportunity」みたいなメッセージばかりで、面倒だと思いながらも一度話を聞いてみても自分のスキルセットと合わないような求人をやたら話してくるだけだったり。
というわけで Linkedin は会社のリクルータとだけ話すことにした。
Findy でも「転職活動中」にステータス変更して求人を探してみることにした。知らなかったけど Findy の中にも転職エージェントのような人がいて、転職相談みたいなことができるらしい(転職活動を始めるまでは Findy は github とか連携してスキル偏差値を出してみるだけのサービスという認識だった)
せっかくなので話してみることにした。担当してくれた人はちゃんとこちらの話を聞いてくれて、ただ闇雲に求人を紹介するなんてこともしなかった。今回のレイオフの後にどんなキャリアを考えているかの話相手になってくれて、企業を選ぶ軸を整理するのにとても役に立った。転職を考えてるエンジニアの人は Findy でユーザーサクセスの人に相談するのもいいかもしれない(注:Findy を褒めてるけど別に Findy から頼まれたわけではない。落ち込んでる時に親身に対応してくれたから Findy に対して過剰にポジティブな印象を持ってる可能性はある)
面接対策
求人探しと並行して面接対策を始めた。
技術職なのでどこを受けるにしてもコーディングテストのようなものはあるだろうと思ってとりあえず algoexpert にある問題を100問。その後 HackerRank と leetcode でそれぞれ50問ずつやった。
それと iOS Engineer を長らくやってきたので同じポジションで転職活動をした方がすぐ仕事見つかるかなと思って iOS 関連の面接対策も始めた、これには ChatGPT を使ってみた。
すごい便利。新時代来たなという感じがする。使いこなせるように頑張りたい。
仕事はなくなったけどこういう時こそ日常をやっていかないといけないと思ったし、子どももいるので平日はいつも通り朝起きて日中はコワーキングスペースで面接対策やりつつ個人アプリ作ったり勉強したりして過ごした。
無職になった時のために時間を潰す練習をしてる。とりあえず一つ見つけたので公園でぼーっとする中年にはならさそう pic.twitter.com/BuiwZF9Mkw
— takecian (@takecian) March 14, 2023
4月
いくつかの企業とカジュアル面談をやって、その中から受かったら行ってみたいと思った会社の選考に進んだ。4社くらい。
えるしつているか おうぼするのはただだぞ pic.twitter.com/qofnfY7Vk2
— takecian (@takecian) April 11, 2023
話題の OpenAI もエントリーしてみたけど今の時点でも何の音沙汰もない。
エントリーした会社の選考を進めたんだけど、その中の数社の選考で感じたのが「このプロセス、Googleの採用プロセスに似てるな」である。同僚に「外資とかそれに近い会社の選考はGoogleの採用プロセスと似てることが多い」という話をされたことがあるけどこれがそうか、と思った。「考えてる事を言葉で説明しながら問題に取り組んでください」みたいなやつである。Googleの採用プロセスには多少詳しいというのもあって「面接官が評価してるのはこんな事だな」というのがある程度予想できて面接はうまくいったと思う。
できればGW前までに決めたかったので選考を受けてる会社には「GWまでには決めたい。他の会社の選考も進んでるから早めにお願い」というような事を伝えて選考を早めてもらった。
ありがたいことに選考進めた会社からは全部オファーをもらうことができた。今回選考に進んだ会社は縁があれば入社してみたいと思った会社だけだったのでかなり悩んだ。
こうやって数行にまとめると「転職活動楽勝だったんじゃん」というように見えるけど実際は「落ちることもあり得る」という考えは常に頭から離れなくてそれなりに消耗した。転職活動の中で何人かのリクルータから「(Googleの人には)弊社の選考はそんなに難しいものではないと思います」のような感じの話もされて、それが結構プレッシャーだった。「そんなことないぞ、少なくとも僕はそんなすごいエンジニアではないぞ」というのは何度も心の中で思った。
5月
5月はもう予定もなく再就職までのんびり過ごそうと思ってたら昔ちょっと手伝ってた会社から「暇?ちょっと相談乗ってよ」と言われたのでちょっと遊びに行ったりして過ごそうと思う。英語も忘れないようにしないといけない。
「レイオフされたことがある」というのがいつか大きな財産になる
— takecian (@takecian) March 2, 2023
今回初めてレイオフというものを経験したんだけど、かなり精神的にはきつかったけど、おちこんだりもしたけれど、私はげんきです。